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【  2012年01月  】 

龍の年-4

【シリーズ】月とカッパ

2012.01.31 (Tue)

 午後になり、のの子は綾美と待ち合わせて土井の車で初詣にでかけた。お気に入りの濃い赤の振袖に名古屋帯。のの子としてはかなり気合を入れたつもり。なにしろシャネルのお着物はないし、和装なら綾美にひけをとらないはずだ。と───そう思ったのはのの子の浅はかさ。綾美の着物はピンクから淡紫までのみごとなグラデーションの地色に虹のような色の総絞りで大胆な絵羽模様を描いたもの。のの子はそれと似た着物を展覧会でみたこと...全文を読む

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龍の年-3

【シリーズ】月とカッパ

2012.01.30 (Mon)

 「わぁ! これあったかいね」目をこすりながら牡丹と萩がやってきた。カッパに付き合わされ、ゆうべかなり遅くまで起きていたらしい。二人ともファンヒーターを喜んでいる。萩の入れてくれたお茶で、早速おはぎをつまみながら今年最初のお茶会を。去年のカラ梅雨や、綾美の家の話をしながら賑やかに過ごす。けれど、なにかが物足りない。のの子は祖父の生菓子を取り出した。「この生菓子どうかな? 今年の干支の龍なんだけど」「...全文を読む

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龍の年-2

【シリーズ】月とカッパ

2012.01.29 (Sun)

 「牡丹ちゃん萩ちゃんいる? あけましておめでとうーーーー!」のの子の呼びかけに反応がない。いつも座敷わらしの二人は早起きで、とっくに起きていい頃なのだが。しばらくすると、ずるずると妙な音が近づいてきた。なんとも嫌な予感がしてそっと障子の隙間から覗いてみると、緑色の巨大なツチノコが床を這いながらやってくる。ぎゃァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ思わずのの子はその場にしゃがみこんだ。「ぉイぉイ、そンな大声...全文を読む

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龍の年-1

【シリーズ】月とカッパ

2012.01.28 (Sat)

 こちら神奈川の磯子・風月堂さんの2012年干支生菓子。篠ノ井和菓子舗のものとは違いますが、雰囲気だけでもどうぞw▲磯子・風月堂さんのHPはこちらhttp://store.shopping.yahoo.co.jp/gomadaremochi/jharuetotatu12.html月とカッパ  <新春・番外編>  龍の年どうしてお正月ってこうわけもなく嬉しいんだろう?2012年元旦。もうとっくにお年玉をもらえる年でもない篠ノ井のの子は、目覚まし時計が鳴るより早く午前6時にはバ...全文を読む

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俺とあいつ

【掌編集】「花暦」-冬

2012.01.27 (Fri)

 今朝、あいつが死んだ。あいつは捨て猫で、まだほんの仔猫のころから俺がミルクを飲ませて育てた。俺が会社から帰るのを玄関マットの上で待ち、足に体をすりつけてご飯をねだった。けれど俺もあいつも男だから、抱っこして可愛がったりはしなかった。いつも適度な距離を置いて、TVを見るときは隣のソファにいたし、PCを叩いているときは気まぐれに膝に乗ってきたりした。夜は俺の足元で丸くなって眠っていた。体は一人前に育っ...全文を読む

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後書きぽいもの

【長編】猩々岬

2012.01.25 (Wed)

 「猩々岬」最後までお読みいただきありがとうございました^^このお話は、お友だちのfateさんの人魚姫をモチーフに描かれた作品「マーメイド・シンドローム」を読んだ後に着想したものです。「マーメイド・シンドローム」にでてくる人魚は「真珠」ちゃんといいまして、彼女はその名のとおり、とても清純で可愛らしい女性なんです。▼fateさんの「マーメイド・シンドローム」はこちらです^^http://alicefreeman.blog61.fc2.com/bl...全文を読む

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猩々岬-終

【長編】猩々岬

2012.01.25 (Wed)

 一方、珊瑚は自分がまだ人魚だったころを思い出していた。初めて弓弦を浜に見かけた日。少年のような笑顔のまぶしい人間の青年に恋をした。悩んだ末に訪れた海の魔女はこう言った。「おまえを人間にしてやることはできるよ。 でも、ただってわけにはいかない。 いつかのお姫さまと違って、おまえのダミ声じゃお代にならないしねぇ……。 そうだね、本物の人間の肉をもっておいで。 年寄りは嫌だよ、若い女の肉がいいねぇ、それと...全文を読む

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猩々岬-16「花模様の浴衣」

【長編】猩々岬

2012.01.25 (Wed)

 「花模様の浴衣」あれから何ヶ月が過ぎたろう。弓弦と珊瑚は幸せな毎日を暮らしていた。そろそろ花の便りも聞かれるころ。夕日の差す室内で、珊瑚は今日も店にでる仕度をしている。「弓弦さんごめんなさい、 ウォークイン・クローゼットから銀の帯留めを取ってきてくださいな」「あぁ、いいよ」珊瑚の着物がぎっしりと衣桁にかけられているウォークイン・クローゼットで帯留めを探していた弓弦の手がふと止まった。一番端に下がっ...全文を読む

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猩々岬-15

【長編】猩々岬

2012.01.24 (Tue)

 珊瑚の部屋にたどりついてから、ようやく弓弦は口を開いた。「俺、本物の人魚って初めて見たよ。空想の生き物じゃなかったんだな」「あらやだ、ずっと私が嘘いってると思っていたの?」珊瑚は手早く夜着に着替えるとエプロンをつけキッチンに立った。しばらくすると室内にいい匂いがただよってきた。そういえば夕食を食べていなかったと今ごろになって気がつく。弓弦はどこから聞けばいいのか考えながら珊瑚の料理を待った。「……そ...全文を読む

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猩々岬-14

【長編】猩々岬

2012.01.24 (Tue)

 驚くべきことが多すぎて、弓弦はどこからたずねていいのかわからなかった。店を閉め、後片付けをボーイにまかせて二人は車に乗り込んだ。弓弦の頭には後ろ手にロープをかけられた人魚の姿がちらついていた。彼はハンドルを操作しながら店で見た一部始終を思い返していた。白い肌の女性の人魚。彼女の腰から下は確かに魚になっていて、水槽を自由に泳いでいた。1億という大金をはたいて買った客は一体、人魚をどうするのだろう?見...全文を読む

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猩々岬-13

【長編】猩々岬

2012.01.22 (Sun)

 その日、店はいつになく熱気を帯びていた。入り口には花が飾られ、壁際に並んだ暗いブースにはどれも人の気配がしている。初めて『マーメイド』を訪れたとき、弓弦を出迎えたボーイが忙しそうだ。「今日はなにかあるのかい?」「あなたにとって、とても大切な日よ弓弦さん」珊瑚は目を細め、いつものようにクククと忍び笑いをもらした。黒地の大振袖に金の帯を締め、今日の彼女はいっそうあでやかだ。午前0時を合図に入り口のドア...全文を読む

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猩々岬-12

【長編】猩々岬

2012.01.20 (Fri)

 彼はたまらず珊瑚に懇願した。「あの店はなんのためにやっているんだ? 金なら俺、頑張って稼ぐよ。 あの爺ぃたち、みんな珊瑚めあてに通ってくるんだろう? 俺、嫌なんだ。 いくら仕事だからって珊瑚があんなやつらに笑いかけるのが耐えられないんだ」「あら嬉しい」鏡の前で着物を着付けながら珊瑚は弓弦を振り返った。いつもは下ろしている髪を今日はきっちり結い上げている。襟元からのぞくうなじが白い。「でも、あのお店...全文を読む

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猩々岬-11「オークション」

【長編】猩々岬

2012.01.20 (Fri)

 「オークション」水を循環する鈍いモーター音と、バシャバシャいう水音で弓弦は目が覚めた。青いカーテンからさす光は弱弱しい。今日も外は雪が降っているようだ。既にベッドに珊瑚の姿はなかった。ベッドサイドに置かれた水差しからコップに水を汲んで飲み干す。それが塩水だからと、もう弓弦は驚かない。それどころか毎日、何度かこれを飲まずにはいられなくなってしまっている。煙草かなにかのように、中毒性があるのかもしれな...全文を読む

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猩々岬-10

【長編】猩々岬

2012.01.18 (Wed)

 まとわりつくような珊瑚の視線に戸惑いながら、弓弦は目を合わせてみる。白い彼女の頬が心なしか赤みをさしたように見えた。「2年前の夏。この浜辺で弓弦さん、あなたをお見かけしました。 あなたにまた会いたくて、海の魔女に人間の姿にしてもらえるようお願いしたの。 でも、魔女はある物を持ってこなければダメだというので……」珊瑚は微笑んだまま小首をかしげた。風が少し強くなってきた。長い髪がふわりふわりと風にたなび...全文を読む

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猩々岬-9「珊瑚」

【長編】猩々岬

2012.01.18 (Wed)

 「珊瑚さんご」翌日は珍しく晴れていた。車の屋根に積もった雪が日の光にキラキラと反射している。それをざっと手で払い、やかんのお湯でフロントガラスの氷を溶かしてから、弓弦は海岸めざして車を走らせた。もう一度あの岩場に行ってみようと思いついたのだ。夏に明穂と歩いた浜辺を、一緒に過ごした岩場を確かめるため。彼女の面影をよりはっきりと胸に思い出すために───。冬の海は鉛色で、テトラポットに群れたたずむかもめも...全文を読む

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猩々岬-8

【長編】猩々岬

2012.01.16 (Mon)

 智は弓弦を引っ張り、猛然と早足で歩いてゆく。10分も暗い路地をなかば走るような勢いで歩いて、ようやく繁華街の明かりの下で二人は立ち止まった。「……三島お前、もう明穂ちゃんのことはあきらめろ」ゼェゼェと肩で息をしながら智はきっぱりと言った。「かわいそうだが、亡くなった人はもう帰ってこねぇ。 あの珊瑚って女、絶対かかわらないほうがいい。 あの店も怪しいし。お前までおかしなことになるぞ。 いいな、もう忘れ...全文を読む

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猩々岬-7

【長編】猩々岬

2012.01.16 (Mon)

 ずるっトン。ずるっトン。なにかを引きずるような音がしたかと思うと、テーブル脇に女が立っていた。「お待たせしました」それは、いつか猩々岬の喫茶店で見た切れ長の目の女だった。女はやはりあのときと同じように、弓弦にしっかり目を合わせ艶然と微笑んだ。筆ではらったような目は黒々と、口角の上がった唇は燃えるように真っ赤にうごめいている。弓弦と智は思わず息をのんだ。智は服の上から腕をさすっている。鳥肌が立ってい...全文を読む

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猩々岬-6「BAR・マーメイド」

【長編】猩々岬

2012.01.15 (Sun)

 「BAR・マーメイド」繁華街から少し外れたビルの8F。そこに確かに『マーメイド』はあった。金文字で『会員制BAR・マーメイド』と書かれた青いドアを開けると、店内は暗く、正面の壁一面が巨大な水槽になった洒落た造りだった。左右の壁は小さなブースで区切られた客席になっていて、どれくらいの人数が店にいるのかわからない。照明はほとんど水槽の奥からもれる青白い光だけで、とにかくひどく暗い。暗がりからふいに黒服の若い...全文を読む

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猩々岬-5

【長編】猩々岬

2012.01.14 (Sat)

 パチンコ屋の仕事の帰り。明穂のいない暗いアパートに帰るのが嫌で、弓弦は毎日、駅前の居酒屋によっていた。一人で飲む酒もつまらないもので、同僚の智(さとる)がよく付き合ってくれ助かっている。智はもちろん明穂のことを知ってはいるが、気をつかって自分からその話題には触れない。見た目はどうみてもチンピラだが、意外と神経の細かいところがあるのだ。くだらない話題で気を和ませようとする智の話にちょっと笑ってみせて...全文を読む

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猩々岬-4「明穂の携帯」

【長編】猩々岬

2012.01.14 (Sat)

 「明穂の携帯」明穂の遺品に手をつけられないまま、アパートの部屋でぼんやりTVを見ていると、携帯が鳴った。この携帯を鳴らすのは、もう両親くらいしかいないが、もう0時も回った深夜に妙だなと思いながら、弓弦は画面を覗き込んだ。そこには「明穂」とハッキリ書かれている。───まさか、そんなはずは!?一瞬とまどってから彼は通話ボタンを押した。「もしもし、浜辺でこの携帯を拾った者ですが───」電話の主は低くかすれた女...全文を読む

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◇◇総目次-2012◇◇

全記事

2012.01.13 (Fri)

    総目次-2012■季節の読みもの■ 春●●●夏●●●秋●●●冬●●●「猩々岬」去年の夏に自殺した恋人を追う弓弦。彼の前に妖しく美しい一人の女性が現れる 【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【7】 【8】 【9】 【10】 【11】 【12】 【13】 【14】 【15】 【16】 【終】 【後書き】「俺とあいつ」あいつは猫。あいつが逝く間際にとった行動に俺の胸は詰まった■シリーズ読みもの■●●●「橋の途中」新米編集者...全文を読む

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猩々岬-3

【長編】猩々岬

2012.01.13 (Fri)

 ぼた雪は次から次へと降り積もり、駐車場の車の屋根もすっかり綿帽子をかぶっている。客の顔は少し前から能面のように動かない。すっかり表情が消えたのを見ると、マスターは口を閉ざした。相手が考え事にふけるのを邪魔しないのは、もはや職業病かもしれない。黙って冷えたコーヒーのお代わりを入れ、客の前と自分の前に置いた。その気配にようやく客の目に光がもどった。「お客さんは……たしか、亡くなった方の恋人でしたか」「あ...全文を読む

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猩々岬-2

【長編】猩々岬

2012.01.12 (Thu)

 崖の上で花束をほどき、弓弦は花をまとめて風の掌に載せた。一瞬、花は舞いあがり、流されながら海めがけて落下していった。また一段と風が強くなってきた。彼はダウンコートのフードをかぶり、今きた道をとぼとぼと引き返した。駐車場の奥に明穂を見かけたという店主の営む喫茶店がある。こんな真冬に営業しても客など来ないだろうに。それでも少しの暖を求めて、彼は喫茶「風花」のドアをくぐった。カランカラン。ドアベルの音に...全文を読む

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